<< いわしのだんご(つみれ) | main | 鼻血と礼儀 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

カテゴリ:- | | - | -
初期研修、総合診療医研修に必要なもの、場所
日本の医療の今後はどのような方向性になっていくのでしょうか?

日本は稀に見る専門医ばっかり国です。通常、他の国はGPと呼ばれる総合診療医が1次医療と言われる歩いてくる患者さん全般を診療しているというのは以前書いたとおりです。彼らに求められる能力は専門分野に特化した能力ではなく、「日常生活において発生する健康問題の大部分を解決する能力」が求められます。それは

1.病気なのか、病気ではないのか
2.病気であれば総合医で診療できる病気なのか
3.総合診療医が診療できないとすれば何科の専門医にどのタイミングで紹介する必要があるのか

などです。
1には例えば禁煙指導であったり、子どもへの防煙指導であったり、ワクチン・発達健診であったり、家族計画の指導であったり、メンタルマネジメントであったり・・・ほんの些細な健康問題も入り、多岐に渡ります。ただそういうトレーニングを提供している・・・厳密に言えば提供できる医療機関は非常に限られています。いえいえ、実際にはたくさんあるのですよ・・・それは大都市の専門分化された大病院ではなく、ちょっと田舎の中小病院、もしくは診療所などの外来は最適な場所であると思います。

いろんな人がいろんな健康上の理由で初めてやってくるところ・・・本当の病気ではないかもしれないような人が健康上の不安を抱えてやってくるところ・・・もしかしたら、すごい病気かもしれない人がまず、やってくるようなところ・・・そういうところが総合医や初期診療能力を育てるのに適していると思います。ただ・・・教える人が情熱を持って、誇りを持って、科学的根拠と理論に基づき、学習者を支援してあげることができるか・・・そこが不足しているだけで日本でも総合医を育てる土壌はたくさんあると思っています。(もちろん、お金の問題もありますが・・・)ただ、日本の現状と歴史的背景から言って、産科は総合医から分けて考えても良いかもしれませんね。産婦人科医の窮状から考えると簡単な婦人科の診察や子宮がん検診などは総合医がすべきかもしれませんけど・・・(実際にこちらにきて、初めて僕は婦人科診察の仕方を何度も学び、今では学生に子宮のスメア(細胞)のとり方を教えている状態です。)そして、その上に(医師としてえらいと言うわけではなく、診察する順番として)専門医がどっかりと総合医から紹介されてくる患者さんを待っていて、やってきた患者さんに対して自分の分野では誰にも負けないという誇りを持ってすばらしい専門診療をやってほしい・・・。そういう思いでいました。

そして、ここオーストラリアにやってきてその思いは確信に変わっています。学生を田舎の専門医があまりいないところで総合医の元で教育する・・・それが総合的知識と技術を修得することに大きく寄与していることを今、肌で感じています。というわけで今は地域医療基盤型医学教育というのを大学院で学んでいるわけです。

ただ、新しい臨床研修制度が始まり、圧倒的に大学病院に残る医者が減りました。随分、大学病院外への研修医の流出は落ち着き、大学病院に半分、そとの研修病院に半分と言う状態になってきています。でも、以前に比べて少ないのは事実であり、それで困ったのは大学病院・・・だけではありません。もっと大変なのは大学病院から医師の派遣を受けていた地域の基幹病院です。大学病院が医師不足になったため、地域の病院から医師が引き上げられてしまいました。もちろん、そのしわ寄せは地域住民に来ています。

出産の予約が妊娠6ヶ月以降になるととれない・・・緊急っぽい状態なのに小児科医がいなくて受診できない・・・などなど。

この現象を地域の病院がその地域で必要な医者を将来に向けてがんばって育てる・・・ための過渡期と考えるのか、この制度によって地域の医者が減ってしまった・・・結果と考えるのか、もうしばらく時間が必要だと思います。でも・・・この2年間の研修(最低、内科、外科を長期に、小児科・産婦人科・精神科・救急・地域医療を履修しなくてはいけないと言うもの)のせいで研修医が減ってしまった大学病院からの猛反発によって早くも厚生労働省がぐらつき始めました。大学病院での卒業後の研修は小児科を含め、最低限の科を最低限の期間だけ回れば、最初の2年間のうちから臓器別の専門科に重点をおいた研修(専門医を最初から育てる)を認める・・・と言い始めたのです。必要最低限度の知識・技術を持っていない専門医が増え、地域で簡単な救急医療ができずに患者さんが助からないと言う教訓から、しっかりとした基本的診療能力を全ての医師が身につけようと始まったこの研修がもう変更・・・しかも、本来の目的に逆行するような・・・これをどう評価すべきかは分かりませんが、他の先進国と違って(他の国は医学生が医者と同様のことを学生のうちからしっかりと臨床現場でトレーニングしています)医学部を卒業する前にしっかりとした知識と技術を身につけることができない日本の医学部教育の現状をしっかりとしたものにしない限り、卒後の研修はやはり、専門科中心ではなく、せめて2年間はしっかりとした総合研修をすべきであると思っています。

日本の医療構造がこれからどうなっていくのか・・・日本も総合医という医者を作る方向が一層、加速されるのか・・・やはり、日本になじまないと言う理由で元に戻るのか・・・これからは医学教育の専門教育を受けた一人として注意深くみていく必要があると思っています。どこにいても予算の問題はついて回るんですがね。

またまた、私事で長くなりました。
カテゴリ:日々のつぶやき | 06:30 | comments(4) | -
スポンサーサイト
カテゴリ:- | 06:30 | - | -
コメント
こんばんは〜 先日は水ぼうそうでの助言ありがとうございました!おかげさまで、長男は出発日前日に発疹がかさぶたになったので、旅行をキャンセルせずに楽しむことができ、今日帰ってきました♪

ところで、GP制度(?)、きちんと機能するようなら頼もしいです。

私は、アメリカドラマのERを第1シーズンからずっと見ているんですが、あれもGPの一種なのでしょうか。当初は何も知らなくて、どうして「緊急救命室」で軽い風邪や怪我から、銃創患者、薬物患者まで診るの?って思っていましたが、患者が自分で判断して専門医にいきなりかかるより、適切な医療が受けられて、効率もいいなあと思うようになりました。

で、あまりに軽症・重症の患者が入り交じって、トンでもなく長時間待ちとなっているのを改善しようと、トリアージを立ち上げる過程を放送した年もありました。

日本でも、救急医療が厳しい状況にあるので、トリアージについて議論されてますよね。

現状ではいろいろ課題もあるようですが、GPやトリアージがうまく機能して、患者が適切な医療を受けられ、なおかつ医師や看護師の側の負担も少しでも軽くなることを願っています。
| ひかり | 2008/07/30 11:23 PM |
自治体の保健所とか保健師さんをもっと活用すればいいのにと思います。わたしが無知で、保健師さんたちは激務だよ!というなら申し訳ないですが。病院より敷居の低い健康相談できる場所として、必要な人には医療機関を紹介してくれるなら行ってみようかなという気持ちになるなぁと思いました。
| くまちゃん | 2008/08/01 5:57 AM |
こんにちは、先生。
この問題は医療だけに限らないんですよね。 今の日本の抱えている問題です。経済に飲まれている人が多すぎて、健常者が人としての基本(手足不自由なく健康にいきること)をもっていれば大体の問題は解決されると思うんです。 
友人が新人教育をしています。それも年が年ということもあり責任ある立場で。 でも正直彼女を知ってる私から見るとこの人が新人を?!と驚いています。 確かに名刺の受け取りかた、紹介のしかた、席の座り方、メールの出し方・・・HOW TO ものは教えれますが・・・相手を想う心を加えて教えれるひとを、その会社は選んでいないという現状が今の日本なんですよね。 それでも分かってる人は「小さなことからコツコツと」実行しているのも事実なので、個々でだけでなくこういった人たちが様々な分野で繋がっていけたら随分変わるだろうと思います。 そいういった点、ここに来るお母さん他、病気のことだけでなく、心も教えてもらえてるから大切なブログなんですよ〜。 「かっぱえびせん」のようですね。(♪やめられないとまらない〜)
| みのほ | 2008/08/02 9:11 AM |
みなさん、コメントありがとうございます。
ひかりさん:救急医は基本的にはオールマイティでありつつ、それぞれの得意分野を持って診療し、救急外来に来院された患者さんは基本的に全員診る。そして、手に負えない場合は専門の医者に引き継ぐ・・・北米型のERと呼ばれています。日本もこのタイプが少しずつですが増えてきています。トリアージも含めてみんながなれる必要がありますね。
くまちゃんさん:そうですね。問題は保健師さんをだれが継続的に教育していくか?と言うところがあります。医療機関から離れて仕事をしている人が多いので時々、考え方が古い方がおられます。そういう生涯教育を市町村が責任を持ってしていくことが大切でしょうね。
みのほさん:そう言ってもらえるととてもうれしいです!確かに新人を教えることはとても責任を伴うことですよね。医師も同じで医者になって最初の2年間に出会った指導医の影響は非常に大きいものです。問題は無意識のうちにそういう影響を受けていることを研修医も指導医も気がついていないんですね。初期にすばらしい指導医に出会えば、きっとすばらしい医者に成長していくはずなんです。将来の医師を育てる素晴らしい仕事なんですけどね。自分も気合を入れなおします。
| Dr.TERU | 2008/08/02 10:44 PM |
コメントする